SFでファンタジー

新世界より (上)

新世界より (下)

下巻は今日一日で読了。
途中からは引き込まれてどんどん加速していきました。
いや、これは個人的には今年初の殿堂入り、五つ星てき作品ですな。
SFでファンタジーでジュヴナイル、なによりエンターテイメントなのが良いですね。
今年初めにして、私としましては非常に楽しめた作品でした。
きれいに張り巡らされた設定と伏線は、まぁ取りようによってはご都合主義ですが、
破綻せずに世界観を律する以上、それはもはや作品世界の約束であり、法則でしょう。
呪力と呼ばれる超能力に近いものを手に入れた人間の未来設定として、
オーソドックスながら説得力の有る舞台に繰り広げられるのは、
ジュヴナイルなエンターテイメントとしてあらゆる要素を詰め込んだ快作でした。
根源的にはユートピアSFなのかもしれませんが、
エロ、グロ、ナンセンスも含めて冒険と戦争、恋愛と成長、
詰め込んだ要素をきれいにひとつの作品にまとめているあたり、
楽しめる作品として非常にレベルが高くまとまっていると思います。
反面SFやファンタジーがあまり好きでない方はそういう世界設定自体は
上で述べたようなご都合主義とも取れますのでいまひとつかも。

人間の感情というテーマは貴志氏がホラーで主に見せていたことですが、
感情に呪力という実存を与えることからスタートした作品なのでしょうか。
その呪力と感情をテーマにしつつ、すばらしくエンターテイメントを書いているあたり、
小説家としての充実を感じるかのような作品ではないでしょうか。
その設定やテーマはさておき、「読ませる」「惹きつける」力は、
とてつもないものを持っている作品だと思います。
そういう意味で、あとがきや解説も無くシンプルに読後感を味わえるのもよし。
実に、実に楽しめました。
職場からこうして長文で更新してしまうほどには(笑)